クリスマスといえばクリスマスツリーですね。
誰も不思議に思わずに、毎年あたりまえのようにツリーを飾るのですが、私は小さい頃から素朴な疑問を抱いていました。そもそも、キリスト教の救世主イエス・キリストの誕生日であるクリスマスに、なぜ樹木を一本立てて飾り付けるのでしょうか。そしてそれはいつごろからの風習なのでしょうか。
クリスマスツリーの歴史を紐解いていくと、その歴史の中にも「クリスマスとりんご」のつながりがちらりと見えてくるのです。
もともと、常緑樹を祀るのは、キリスト教以前の異教時代から、冬至の魔除けとして飾る習慣があったことに起源します。その後、モミやトウヒを用いた現在の形をしたツリーは、ドイツ・アルザス地方で生まれたと云われています。アルザス地方には、昔から先祖崇拝の風習があり、冬至前後になると家やお墓を大掃除して木を綺麗に飾り、あの世から帰ってくる先祖を迎える風習がありました。まるで日本のお盆の行事にそっくりな風習ですね。
木に飾りつけしたクリスマスツリーの最古の記録は、1419年アルザス地方フライブルグのパン職人が屋内の暖炉前に立てたという記載があります。パン職人は、森から1本の木を切り出してきて家の中に運び入れ、余っていたパン生地で作った飾りとテーブルにあった「りんご」を飾ったとあります。
次に出てくるのは1597~1669年のテュクハイムの同業者組合長の請求書の明細に、「ツリー飾り用品」という記載があります。アルザスの「黒い森」(シュバルツバルト)と呼ばれる森の奥深くのパン屋で誕生したクリスマスツリーは、100年以上たった17世紀前後頃にようやくドイツの都市部で知られるところとなったのです。
当時のクリスマスツリーの飾りは、「ホスチア(オブラート)」「りんご」「ナッツ」「菓子」「色紙」「レーペクーヘン」とあります。中でも、りんごは大変重要な役割で、アダムとイブを想起させ、りんごを吊るした木は楽園の木を意味します。
最も神に近い果物、またその色や形の意味付けや、長期保存できこと、加工しやすい食材であること、以上から考えて、昔からクリスマスツリーの飾りとして完璧な存在、それがりんごなのです。
世界最古のクリスマスツリーの飾りに「りんご」が挙げられているのには、何の不思議もありません。