現在の私たちが知っているクリスマス文化の形は、おおよそ中世の頃に形作られ伝播されてきました。
今では、クリスマスにはクリスマスツリーを飾るのが当たり前となっています。それでは、クリスマスツリーが生まれる以前はどのようなクリスマス飾りがあったのでしょうか。
それはドイツ中東部にある山岳地帯のエルツ地方に、クリスマスツリーの祖先ともいえる飾りが残っています。エルツ地方では、クリスマスツリーが生まれる以前から、家庭でクリスマスピラミッドと呼ばれる飾りを作って祝っていました。
もともと、アドヴェントクランツ(横たえたリースの上に4本のロウソクを立てたもの)がその由来とも云われています。そのクリスマスピラミッドのはじまりとなった原型は、木の棒で作った四角錘に、ロウソクを4本立て、2段になっている木の棒の継ぎ目をりんごに刺して支えた形が、資料に残っています。材料はすべて身の回りにあるもので、安価に手に入る白木の木材やロウソクやりんごなどで、これが当時の庶民の一般的なクリスマス飾りでした。
クリスマスツリーの祖先と言われる「クリスマスピラミッド」初期のものを再現チャレンジ!
①モミの葉
②りんごの枝とクルミ
③りんご
④りんごの枝の皮を剥いだ白木の棒
⑤イエス像(陶器) 制作協力:津軽焼伝統工芸士 高野博氏
⑥蝋燭
⑦白木の皿(ポプラ) 制作協力:漆芸家 山中泰彦氏
エルツ地方では古くから、クリスマスツリーではなくクリスマスピラミッドが飾られて、18世紀には、大きな階段があり人が乗れるくらい巨大なクリスマスピラミッドが教会前の広場にクリスマスのシンボルとして建てられていました。19世紀になると、上部にプロペラのついた現在のクリスマスピラミッドの形が作られ、飾りとしておもちゃとして定着していきました。
20世紀に入ると、ドイツの伝統木工芸品として生産が盛んになり、ヨーロッパをはじめ世界中に知れ渡っていきました。
現在では、ドイツのクリスマスマーケットには必ず、クリスマスツリーと並んでクリスマスピラミッドがたくさん並ぶほどポピュラーなものとなり、行き交う人々を楽しませてくれます。
クリスマスツリー以前から「りんごとクリスマス」は切っても切れない関係だったのですね。